犬を飼う決断は、あなたの人生だけでなく、その犬の一生を左右する重大なものです。
ここでは、あなたが後悔しないため、そして犬にとって幸せな選択をするための、より現実的で詳細な判断基準を解説します。
犬は「可愛い」「癒やされる」存在として語られることが多いですが、
誰にとっても飼うのが正解とは限りません。
生活スタイルや価値観によっては、
犬を飼わない方が、結果的に犬の幸せにつながるケースもあります。
この記事では、
犬の立場を第一に考えたときに、
慎重に検討した方がいい人の特徴を整理します。
この記事でわかること
- 犬を飼うことが負担になりやすい生活スタイルや考え方の具体例
- 「犬が好き=飼うべき」ではない理由と、飼わない選択が犬にとって優しい場合があること
- 犬を迎えるうえで本当に必要なのは癒やしではなく、最後まで命を引き受ける覚悟であること
犬を飼わない方がいい人の特徴|後悔しないための現実的な判断基準
1. 毎日の世話を「負担」と感じやすい人:犬のQOLは飼い主の「義務感」で決まる
犬との暮らしは喜びだけでなく、決して欠かせない義務が毎日発生します。これを「仕方なく我慢するもの」と感じてしまう人は、自分自身だけでなく、犬の生活の質(QOL)を下げてしまいます。
現実的な世話の項目と必要な時間
- 食事管理と健康チェック: 毎日の食事(回数、量)に加え、食欲や便の状態など小さな変化を見逃さないチェック。
- 散歩(天候・体調に関わらず): 運動だけでなく、精神的な安定に必要なルーティンです。雨の日も猛暑日も、飼い主の体調が優れない日も、犬は外に出たがります。小型犬(マルチーズなど)でも、朝晩の2回、合計1時間程度の時間を確保する必要があります。
- 清潔の維持: トイレの掃除、毎日のブラッシング、定期的なシャンプーやトリミング、耳掃除、歯磨きなど、人間の幼児レベルの手間がかかります。
- 病気と老後の介護: 高齢期になると、排泄の介助や夜鳴きへの対応など、さらに世話の負担が劇的に増えます。
【現実】 これらのルーティンを「仕方なく我慢するもの」と感じると、ストレスが蓄積し、やがて世話がおろそかになります。犬は環境や感情に敏感なため、飼い主の「義務感」や「不機嫌」は確実に伝わり、犬もストレスや不安を感じやすくなります。

2. 長時間、家を空ける生活スタイルの人:愛犬の「心」と「行動」への影響
仕事や通勤の都合で1日の大半を家の外で過ごす人は、特に注意が必要です。犬は社会的な動物であり、単独行動を好む動物ではありません。特にマルチーズのような愛玩犬は、飼い主と密接に関わることを強く望みます。
長時間留守番が引き起こす問題
- 分離不安症: 飼い主と離れることへの極度の不安から、過度な吠え、徘徊、自傷行為(自分の体を舐め続けるなど)に発展することがあります。
- 問題行動の発生: ストレスから家具や壁の破壊行動、不適切な場所での排泄、過剰な無駄吠えにつながります。
- 犬種による違い: 成犬でも6~8時間が留守番の限度とされますが、愛玩犬種は特に寂しがり屋で、留守番に対する耐性が低いことを認識すべきです。
【現実】 在宅時間が少ない場合は、「家族との分担」「ペットシッターの定期利用」「犬のデイケア」など、経済的負担を伴う現実的なサポート体制を整えられるかが重要です。ただケージに入れておくことは、犬にとっての虐待になりかねません。

3. 生活費に余裕がない、または不安定な人:「最低限」では犬の健康を守れない
犬を飼うには、想像以上に継続的な費用がかかります。特に「病気やケガの治療費」は、いつ、いくらかかるか予測不能です。
継続的に発生する費用
- 初期費用: 迎え入れ費用、ケージ、トイレ、食器、リード、キャリーバッグなどで数十万円。
- 月々の費用: プレミアムフード、おやつ、消耗品(トイレシートなど)、トリミング・ケア用品で月1〜3万円程度。
- 年間・定期費用: 狂犬病ワクチン、混合ワクチン、ノミ・ダニ・フィラリアの予防薬で年間数万円。
- 生涯最大の費用:医療費
- ペット保険は必須と考えるべきですが、それでも治療費の一部しかカバーできません。
- ガン治療や大手術が必要になった場合、一回で数十万円〜100万円以上の出費も珍しくありません。
- 小型犬の生涯費用は、医療費を含めると200万円~500万円にもなると言われています。
【現実】 「最低限でいい」「何とかなるだろう」という考え方は、経済的な困難に直面した際、「十分な治療を受けさせられない」という最悪の状況を招き、結果的に犬の健康リスクや寿命を縮めることにつながります。

4. 生活環境が整っていない人:環境変更のコストとリスク
犬を迎えてから住環境を整えるのは、精神的・経済的な負担が非常に大きい上に、犬にも大きなストレスを与えます。
飼育を慎重に検討すべき環境
- ペット不可の住宅: 隠れて飼うのは絶対にやめましょう。発覚した場合、退去を命じられるだけでなく、犬を失うことにもなりかねません。
- 騒音トラブルが起きやすい環境: 集合住宅で犬の吠え声(特に留守番中)が近隣住民とのトラブルに発展し、飼い主と犬の両方が精神的に追い詰められるケースがあります。
- 犬の健康を脅かす環境:
- 滑りやすい床(フローリング): 特に小型犬は股関節や膝蓋骨を脱臼しやすく(パテラ)、滑る床は深刻な関節疾患の原因になります。滑り止めマットの敷設が必須です。
- 温度管理ができない部屋: 夏の熱中症や冬の寒さから守るため、留守番中も含めた24時間体制の温度管理(エアコンの使用)が必須です。
【現実】 「犬のためなら引っ越す」という選択肢は容易ではありません。犬を迎え入れる前に、今後10数年の生活環境について、賃貸契約も含めて確実な準備が求められます。

5. 「癒やし」だけを期待している人:犬は「感情を持つ命」
犬はロボットでもセラピー器具でもありません。「疲れている自分を癒やしてくれる存在」として一方的な期待を寄せる人は、犬の現実と向き合えずに失望することがあります。
犬の「現実」
- 犬にも感情の起伏がある: 人間と同じく、機嫌が悪い日、言うことを聞かない日、反抗期のような時期、病気で世話がかかる日があります。
- 癒やしは「おまけ」: 散歩や食事、しつけなど、飼い主の都合で休めない世話がまずあり、その先に犬との絆による「癒やし」が生まれます。
- 一方的な期待の危険性: 自分の期待通りにいかない現実に直面した時、「こんなはずではなかった」と犬を疎ましく感じたり、十分な愛情を注げなくなったりするリスクがあります。
【現実】 犬は、癒やしを与える存在である前に、あなたの手によって守られ、人生の全責任を負うべき「かけがえのない命」です。

6. 家族全員の同意が取れていない場合:家庭内トラブルの火種に
家族の中で、誰が世話をするのか、費用を負担するのかが曖昧なまま飼い始めると、家庭内トラブルの大きな火種になりやすいです。
トラブルを避けるためのチェックポイント
- 責任と分担の明確化: 「最初は可愛い」という情熱は必ず冷めます。時間が経つにつれ、世話の負担が特定の人(特に母親や主婦)に偏るケースは非常に多いです。犬を迎える前に、10年後の世話の分担表を作成するくらいの覚悟が必要です。
- アレルギーの確認: 家族の中にアレルギーを持つ人がいないか、念入りに確認する必要があります。
- 教育方針の統一: 「しつけ」の方針が家族間でバラバラだと、犬は混乱し、問題行動が悪化します。誰がリーダーとなり、どのようなルールで接するかを統一する必要があります。
【現実】 家族間の合意がないまま迎えた犬は、結果的に家庭の厄介者となり、最悪の場合、手放さざるを得ない事態に発展します。

それでも犬を飼いたいと思ったら
ここまで読んで、「自分は当てはまるかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。それは悪いことではありません。むしろ、自分の生活を冷静に見直せているという点で、とても誠実な姿勢です。
「飼わない選択」も、犬にとって最良の判断のひとつです。
犬と関わる別の選択肢もある
「飼う」ことだけが、犬と幸せに関わる方法ではありません。今の生活環境を変えずに、犬と関われる別の選択肢もあります。
- 家族や知人の犬と触れ合う: 一時的な預かりなどで、飼育の大変さを体験できます。
- 保護施設のボランティア: 散歩や清掃、ふれあいを通じて、犬たちの命を直接サポートできます。
- 一時預かり(フォスター): 獣医師や団体と連携し、新しい家族が見つかるまでの間、自宅で犬を預かる。これは、飼育経験のシミュレーションとして非常に現実的です。
- ドッグカフェでの交流: 犬を連れている人との情報交換や、犬とのふれあいを楽しむ。
まとめ:犬を飼う資格とは「覚悟があるかどうか」
犬を飼うことに、向き・不向きは確実に存在します。
大切なのは、以下の2点に心から「はい」と答えられるかどうかです。
- 犬の人生を背負う覚悟があるか
- 最後まで責任を持てるか(病気・老後を含む)
飼わない判断ができる人は、犬の命を軽く扱わない人です。
そして、そうした慎重な姿勢こそが、本当の意味で犬に優しい選択だと断言できます。


